珈琲の基本

これだけ知ればOK!多すぎてわかりにくい珈琲豆の品種を整理する

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コーヒーチェリー

珈琲は、産地の気候風土によって品質や香味に個性が生まれます。そのため、例えばブラジルとかグァテマラのように産地名が銘柄として使われることも多くありました。しかし、これらは、珈琲の品種とは全く無関係ものです。珈琲で品種という場合は、主に植物学の品種のことをさし、科→属→種と続く植物分類において種より下位の分類階級のことです。

珈琲の品種は、在来種のほかに交配種や1代限りのハイブリッド種なども生まれ、その数は増加傾向にあります。品種は珈琲の味を決定づけるファクターではありませんが、味の傾向を知るには役に立ちます。

数が多くて初心者にはわかりにくい珈琲の品種について、知っておきたい代表品種や注目品種に絞ってご紹介します。

コーヒー豆の 2大品種 はロブスタ種とアラビカ種

アラビカ種コーヒーノキ
アラビカ種のコーヒーノキ

当り前ですが、コーヒー豆はコーヒーの木にできる種子です。このコーヒーの木という呼び方が、そのままカタカナで正式な日本語の学名となり、植物学上はアカネ科コーヒーノキ属に分類されます。英語ではCoffea属 となり、日本でもコフィア属と言うことがあります。コーヒーノキ属とコフィ属は同じ属をさす和名と英名です。

コーヒーノキ属は、大きく分けてカネフォラ種とアラビカ種に分けられます。ところが、珈琲業界では、カネフォラ種をロブスタ種と呼んでいます。これは、「強い」とか「丈夫な」という意味のスペイン語“ ROBUSTA ”や英語の“ROBUST”に由来するものです。

ここでもまた、同じものを指す2つの呼び名が出てきました。このように、日本語では、1つの品種が複数の呼び方をされることもあり、品種に関してよりややこしい状況が起こりがちです。それを踏まえて確認しながら品種を見ていくと、混沌とした品種名が、少しわかりやすくなるでしょう。(本稿も、説明に必要な場合を除き、品種名を統一します)

では最初に、 コーヒー豆の2大品種といわれるロブスタ種とアラビカ種について、それぞれの生育環境など味以外の違いを比較してみます。

ロブスタ種 項 目 アラビカ種
0m~700m 産地の標高 600m~2400m
20℃~30℃ 気温 5℃~24℃
他家受粉 受粉方法 自家受粉
不規則 開花期 雨季の後
10か月~11か月 成熟までの期間 6か月~9か月
1.8%~4.0% カフェイン含有量 0.6%~1.4%

缶コーヒーやインスタントコーヒーに不可欠な「ロブスタ種」

インスタントコーヒー

ロブスタ種は、カフェインを多く含み、アロマ成分が弱いという特徴があります。しかし、上表にある通り、低地での栽培が可能なため、大量生産しやすく安価で生産ができるほか、病害虫に強いという長所があります。

そこで、インスタントコーヒーや缶コーヒー、自動販売機用のコーヒーなどとして利用されています。また、ポルトガルでは、エスプレッソ用ブレンドなどにも使われているようです。

しかし、ロブスタ種をストレートで飲むと、特有の泥臭さが顕著に表れてしまい、お世辞にも美味しいとは言えません。そこで安価なブレンドコーヒーを作る際に、ロブスタ種の欠点が目立たない程度に混ぜて、 ブレンドの増量剤として 使われることもあるようです。

正直なところ、珈琲のえも言われぬ美味しさを味わいたい方や舌の敏感な方などにとっては、冴えないというか、あまりぱっとしない品種だと言えます。

レギュラーコーヒーの主流「アラビカ種」

レギュラーコーヒー

一方アラビカ種は、世界の珈琲生産量のおよそ60%を占め、レギュラーコーヒーのほとんどがアラビカ種とその亜種であると言われています。

先の表の通り標高の高い熱帯高地で栽培されるため、栽培には大変な手間がかかります。また、病害虫にも弱く、ロブスタ種に比べて栽培が難しいため価格も高くなります。

そんなアラビカ種については、覚えておきたい代表的な品種5つの、近年注目を浴びている品種1つをご紹介します。

アラビカ種から派生した知っておきたい品種 6選

品 種 名 生 い 立 ち 豆 の 特 徴 な ど

ティピカ種

アラビカ在来品種の1つ。 フローラルでクリーンな香りを持つ。柑橘系の爽やかな酸味と柔らかな香味に特徴あり。

ブルボン種

アラビカ在来品種の1つで、ティピカの突然変異から生まれた。 重厚で独特な香味を持ち、華やかな酸味と甘みがある。ケニア産の高品質な豆に多く見られる。黄色の実がなる。

ムンドノーボ種

ブルボン種とスマトラ種の交配でできたブラジルを代表する品種。 酸味・苦み・甘味のバランスが良い品種。また、環境への適用力が高く栽培しやすいと言われる。

カツーラ種

矮性種(※1)の代表格で、ブルボン種の突然変異として生まれた。 標高の高い産地では軽やかな酸味とコクが出るが、ブルボン種に比べると酸味は平凡な印象がある。

パカマラ種

エルサルバドルの国立コーヒー研究所が、ブルボンの突然変異種とティピカの突然変異種を交配して開発。 すっきりとした華やかな酸味を持つ。樹高は小さいが、豆は大粒で風味が良い。ただ、コーヒーノキの大敵であるサビ病に弱いとされ、生産量はまだあまり多くないが、現在注目の品種の1つである。

ゲイシャ種
(※2)

1931年にエチオピアで発見されたアラビカ在来品種。 フルーティな酸味と甘みがあり、フローラルな香りも強く注目の品種でる。栽培が難しく、低地栽培では上記の良さを得られないため、長く見捨てられていたが、パナマのエスメラルダ農園産のものが豆の国際品評会で高い評価を得て、一気に知名度が上がったが、収穫量が少ないため価格は高騰している。

※1 矮性種(わいせいしゅ)
基本種に比べて背の低い小型の品種のこと。(例)ヒマワリに対するミニヒマワリなど

※2 ゲイシャ種
蛇足だが、ゲイシャという名前は、エチオピアの原産地の名前から命名されたもので、日本の芸者とは全く関係がない。

品種を知らなくても美味しい珈琲を飲める⁈

珈琲は品種を知らなくても美味しく飲める

珈琲の淹れ方や保存方法、産地についてなどの珈琲関連の知識は、美味しい珈琲を飲むための大きなサポートとなります。 しかし、珈琲の品種については、ある程度知っておくことは、珈琲豆を選ぶ際の参考になると思いますが、品種について詳しいからといって、美味しい珈琲を飲めるかというと必ずしもそうではありません。その逆に、品種について全く知識がなくても美味しい珈琲をみつけることはできます。

なぜそのようなことが起こるのでしょうか?それには、以下のような理由があります。

理由1:流通している生豆は品種が混在していることも多い

シングルオリジンと呼ばれる単一農園で栽培された豆であっても、同じ銘柄の珈琲豆に複数の品種が混在していることは、普通にあります。例えば、弊店で扱っている コーラルマウンテン は、コスタリカの ラ・ミニータ農園 で生産されるシングルオリジンのスペシャルティビーンズですが、 カツーラ種とカツアイ種 (ともにアラビカ種の派生種)が混在しています。

また、複数の小さな農園が集まって協同組合を作っている場合なども、同一銘柄に複数の品種の豆が混在しています。

理由2: 品種より生育環境 が味により大きな影響を及ぼす

タンザニアのコーヒー農園
タンザニアのコーヒー農園

珈琲の味は、生育環境によって大きく変わります。 たとえ同じ品種でも、 育った場所や栽培方法などによって味に大きな違いが生まれます。例えばお米でも、コシヒカリなら産地に関わらず美味しいわけではなく、「南魚沼産のコシヒカリが1番」などと言われますね。このことは、珈琲豆がコーヒーノキから栽培される農作物であることを思いだしていただければ、納得していただけるでしょう。

世界各地で作られる珈琲豆が、同じ品種であっても産地ごとに様々な特徴があり、珈琲好きな人を楽しませてくれていることは、よく知られています。

理由3:品種を指定して豆を買える店はほぼない

そもそも、自家焙煎珈琲豆店であっても、自店で販売している豆の品種を全て細かく把握しているところはあまり多くないと思われます。 また、品種を把握していたとしても、そもそも<理由1>のように品種が混在した豆が送られてくることも多いわけですから、品種を指定して購入するのは難しいでしょう。

したがって、例えばゲイシャ種のような1部の品種を除き、品種のみを指定して豆を購入できる店はほぼないと言ってよいのではないでしょうか。珈琲豆を選ぶ際には、品種は参考程度に、産地の気候風土や生産工程・品質管理などに、より注意して選ぶことをおすすめします。

それでも、品種を知れば珈琲はもっと面白くなる

繰り返しになりますが、お米と違って、珈琲はその品種だけが味を大きく決定するわけではありません。ご紹介した気候風土などのほか、焙煎度合いや抽出器具、その他様々な要素が複雑に絡み合って、珈琲の味を決めていきます。そこに珈琲の奥深さがあり、面白さもあります。

それでも、珈琲の品種について知ることは、珈琲の楽しみをひろげることに一役も二役も買ってくれるでしょう。異品種のコーヒーブレンドの妙を味わったり、新たな品種の発見や、ハイブリッド種の誕生などで、これまでにない珈琲の味が生まれる期待もあります。考えるだけで、なんだかワクワクしてきませんか?

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