珈琲店やスーパーで買ってきた豆を、袋のまま冷蔵庫にいれている方はいませんか? もし、あなたがそんな風に豆を保存していたら、今すぐ止めてください! それは、珈琲豆の保存方法としては最悪です。
ではどうやって保存すればよいのでしょう? そして、その理由とは? 豆の保存に関する疑問に、お答えします。
焙煎したその時から珈琲の香りはどんどん抜けていく?!
保存方法を考える前提として、覚えておいていただきたいことがあります。それは、「焙煎した珈琲豆は生鮮食品だ」ということです。「え~、豆って保存食品でしょ?!」という声が聞こえてきそうですが、生鮮食品だと申し上げるのには、もちろん理由があります。
珈琲豆は、生豆を焙煎することによって様々な化学変化を起こし香気成分が発生します。そしてその香気成分は、焙煎直後からどんどん放出され豆から抜けていきます。珈琲豆の袋を開けると良い香りがするのは、豆から抜け出たこの香気成分が袋に閉じ込められているからです。でも、どんどん出ていくということは、いつかはなくなってしまう訳で、時間が経過して香気成分が少なくなると、珈琲の香りは もはや残り香に近い状態になってしまいます。
この香気成分が抜けるスピードは想像以上に速く、また豆の酸化も並行して進んでいきますので、時間の経過につれて香りも味もどんどん劣化していきます。だから生鮮食品のつもりで取り扱っていただきたいのです。
つまり、珈琲の香りを楽しむためには、この香気成分の放出をできる限り少なくするような保存方法を考えなくてはなりません。
保存の基本は密閉と適切な温度管理
香気成分の放出を最小限にするために注意すべきポイントは保存容器と、保存の際の温度管理です。では、1つずつ細かくみていきましょう。
ポイント1: 豆の購入後できるだけ早く密閉容器に移し替えよう
店頭に並んでいる珈琲の袋には小さな穴が開いていたり調整バルブがついていることが多いのです。その理由は、先にお話した「豆から放出される香気成分」にあります。香気成分がどんどん出てくるので、穴をあけておかないと、新鮮な豆の場合袋がパンパンに膨らんで破裂しないかと心配なくらいです。それを防ぐために、穴をあけて香気成分の逃げ道を作っているのです
でも、香気成分が逃げてしまっては、香りも飛んでしまいます。そこで、キャニスターなどの密閉容器に保存することが大切になってきます。密閉容器に入れ替えることで、容器内をガスで満たし、飽和状態にすることで香気成分の放出を遅らせることもできます。
ここで言う密閉容器とは、写真のキャニスターのような完全密閉容器とお考え下さい。たとえば、茶筒のようなただ蓋ができるだけのものでは不完全で、空気の通り道があると保存場所の臭い移りが起こり、珈琲の風味が落ちてしまいます。
光の当たらない涼しい場所で保管していただければ、密閉容器に保存するだけで、豆ならおよそ3週間、粉でも1週間ほどは、香りや味をあまり損なうことなく、美味しい珈琲をお楽しみいただけます。
ポイント2: 冷凍庫に保管しよう
上記の期間よりも長く保存したい場合は、密閉容器に入れ冷凍庫で保存します。珈琲豆は、焙煎により、生豆にわずかに残る水分も完全になくなるため冷凍庫で凍るということがありません。そのため使用時に解凍する必要はなく、豆でも粉でも出してそのまますぐに通常通りに使えます。
ただし、冷凍庫からの出し入れは素早くお願いします。のんびりとやっていると、室温が高い場合結露によって豆が湿気てしまうことがありますので……。
冷蔵庫内の温度では、香味成分の発生を抑えられるほど低温にならない(※1)といわれるため、必ず冷凍庫に入れてください。もしも、買ってきた時の袋のまま冷蔵庫に入れると、香気成分の発生が進み香りの成分が出きってしまった後は、逆に、活性炭入り消臭剤のように庫内の臭いを珈琲豆が吸い込んでしまい、味も香りも最悪の珈琲になってしまいます。
なお、密閉容器に入っていれば臭い戻りはありませんが、香気成分が抜けていくスピードを抑えることはできませんので、常温保存した場合とあまり変わらない状態になります。
なお、冷凍庫に入れる時に「キャニスターでは場所をとりすぎて困る」という時は、ジップロックのような冷凍袋でも代用できますが、氷や固く凍った冷凍品などと一緒に保存して万一破れたりすると、冷蔵庫に保存した時と同様に冷凍庫内の臭いが付着してしまいますので、ご注意ください。
次の動画では、香気成分が発生して袋が膨らむ様子などをご覧いただけます。なぜ上記のような保存方法をとるのか、目で見て納得していただけるでしょう。
焙煎した珈琲豆は、ちょっとした工夫と気配りで美味しさを長く保つことができます。お好みもありますが、やはり焙煎から間もない新鮮な豆は、コーヒードーム(※2)の溢れんばかりに膨らみますし香りも高いです。また、酸化を気にせず時間の経過とともに変わる珈琲の味を楽しむこともできます。
美味しい珈琲を楽しむには、粉なら1週間、豆なら3週間くらいで飲みきる量を、こまめにお買い求めいただくことをおすすめします。万一それを超える期間保存しなければならない場合に、上記の保存方法を実践していただくのがよいでしょう。
※1 珈琲の香気成分は微量なものまで含めると800種類前後と言われるため、種類により一概に放出を抑える温度を何度と指定できないようです。しかし、氷点下の状態であれば概ね成分の放出を抑えられると考えられています。
※2 コーヒードームとは、ドリップの際にできるドーム上の膨らみのこと。コーヒードームができることは焙煎から日の浅い新鮮な豆の証と言われています。
参考:この記事に登場した器具(キャニスター)
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